紅殻格子にしっくい壁――。京都・祇園にほど近い場所に、風流なたたずまいのその町家はある。軒先にかかったのれんをくぐって室内に入ると、出迎えてくれたのは、豪州から来た6人のブラウン一家だった。 この町家、実は住宅ではない。エイジェーインターブリッジ(東京・新宿)というベンチャー企業が運営する宿泊施設「町家レジデンスイン」の1つで、「有済はとば庵」という名称を持つ。エイジェーインターブリッジは投資家から集めた資金を使って古い町家を買い取り、リノベーションして簡易宿泊施設として蘇らせる。 とはいえ、中に入っても受け付けのカウンターがあるわけではなく、あくまで設備は普通の一軒家。一家はあがりかまちで靴を脱ぎ、畳敷きの居間では地べたに座る。この「伝統的な日本の住宅っぽさ」が人気を博し、町家レジデンスインの利用者のうち7割を外国人が占めている。